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ガイアナ共和国の現状

ガイアナ

基本情報

 

1.面積 21.5万平方キロメートル(本州よりやや小)
2.人口 75.8万人(2012年 ECLAC)
3.首都 ジョージタウン
4.民族 インド系(44%)、アフリカ系(30%)、混血(17%)、先住民族(9%)、その他(1%)
5.言語 英語(公用語)、クレオール語、ヒンディー語、ウルドゥー語
6.宗教 キリスト教、ヒンドゥー教、イスラム教等

 

 

 

洪水問題

 

温暖化による海面上昇によりガイアナで洪水被害の問題が深刻である

 

 

 

人権間の対立

 

インド系住民とアフリカ系住民の人種間の対立が根強く存在。選挙結果等を巡り暴動が発生したりしている。大統領選挙等の特定の時期には民族間及び政党支持者間における対立が激化し、暴徒による道路封鎖、放火、略奪等の騒動が発生している。

 

 

 

金の価格高騰問題

 

ファビアン・ジョージ氏は、数十年もの間、山腹にある自宅近くのジャングルの川で飲用水と生活用水を得てきた。だが、それはこの数年、金の世界市場が上昇を始めるまでの話だ。

今では、彼だけでなく、ベネズエラに近いガイアナ西部のチチ地方に住むほかの村人たちも、彼らの部族コミュニティに最も近い川の水をあえて飲用や浴用にすることはない。なぜなら、現地やブラジルの採掘事業者が地域内で行っている河川および土壌の工事のせいで、化学物質の汚染や堆積が起こっているからである。

南米のガイアナでは、彼らに限らず、「ゴールドブッシュ」に沸く地域に住むその他の部族コミュニティは、今日では長い距離を歩いて、汚染がそれほどひどくないと思われる内陸部の小川まで飲用水の調達に行っている。従来の水源は、ハイテク浚渫機や高圧ポンプ、ホースで土砂と岩石を吹き飛ばし、金を取り出した後の蓄積物や水銀で汚染されているのだ。

2人の子どもの父親である39歳のジョージ氏は、日曜日に街中にあるアメリンディアンと呼ばれる先住民族のために政府が運営しているユースホステルでくつろぎながら、河川の汚染について「チチの状況は本当にひどくなっています」と語った。彼は首都で商取引をして、週の後半には地元に戻る予定だ。

「時には、細心の注意を払って、使える雨水をためたりもしています。そうでもしなければ、飲むのに適した水が得られる小川をはるばる探しに行かなければなりません」。そう言いながら彼は、金の採掘が今日ほど過熱していなかった頃、近くの川は黒っぽかったとはいえ澄んでおり、堆積物などはなかったと振り返った。

金の価格は今年の初め、1トロイオンスあたり2000米ドルに届きそうになった。それと時を同じくして、装置の騒音や河川の汚染、そして人間の活動が急速に激しくなったことで、野生動物は姿を消したと彼は言う。

“投資家たちは、はるかオーストラリア、南アフリカ、米国、ブラジル、カナダといったところからも現れ、かつては英国の植民地だった人口73万人の国で起きているゴールドラッシュに集中的に投資を行った。”

金の世界市場価格が急上昇したことで、ガイアナにおいて金は、砂糖、米、ボーキサイトを大きく引き離し、国の経済を支える貿易品のトップに躍り出た。投資家たちは、はるかオーストラリア、南アフリカ、米国、ブラジル、カナダといったところからも現れ、かつては英国の植民地だった人口73万人の国で起きているゴールドラッシュに集中的に投資を行った。

カリブ海沿岸の貿易ブロックの拠点であるガイアナは、この数年で10億ドル以上の投資を呼び込んでいるが、カナダのトロントを本拠とするガイアナ・ゴールドフィールズ社がやはりベネズエラに近いクユニ地方に大規模採掘場を開けば、今後2年間に投資額はさらに大幅に伸びるだろうと政府高官は予測している。

他にも、カナダ企業を中心とする少なくとも4社が、今後数ヶ月の間に採掘計画を発表する予定であるが、それはすべて、これからしばらく金の世界価格は高値が続くという想定に基づくものだ。

初期段階での見込みによれば、その大規模採掘場からは700万トロイオンス以上の金が生産されるとのことで、それは、カナダを本拠とするカンビオール社が2005年までの12年間、ガイアナ西部のオマニ採掘場を運営していた時の生産量の2倍以上にあたる。当時はそれでも南米最大の採掘場だった。

 

 

 

規制上の課題

 

元陸軍参謀長で現在は地質鉱山委員会の委員長を務めるジョゼフ・シン氏のような高官は、現在、金採掘事業が盛んになるのに伴い、規制当局はさまざまな行政上の課題を抱えるようになったと認める。規制をなんとか実行するために、ジャングルの採掘場を熟知した調査官や資格を有した地質学者、その他の人員を雇って事業活動の調整を行い、全体の秩序を維持しようとしても、採掘は大抵、はるか遠いアマゾンの熱帯雨林で主に行われていて、規制は困難なのである。

鉱山委員会は現在、ジャングルの中に事務所を開設し、金の採掘場に近いところに規制担当官を派遣して、環境が永続的に破壊されることがないように努力している。

委員長が言うには、委員会は違反の報告が本部に届いたら、すぐに「業務停止命令」を発令する準備ができており、これまでも迅速にそうしてきた。

彼は次のように述べた。「違反が報告されたらすぐに対応します。私たちの採掘場調査官の報告であっても、上空を飛行中のパイロットが河川の汚染を発見したという報告であっても同じことです。そうです、私たちは深刻な課題に直面しているのです」

先住民族の包括的組織、Amerindian People’s Association (アメリンディアン人民連合:APA)を率いるジャン・ラ・ローズ氏は、団体として何週間もドナルド・ラモター大統領に正式会見を申し込んでいると言う。採掘の悪影響について訴えようというのだが、その長いリストには、売春、麻薬および人身取引の急増、公害、アメリカインディアンが魚をはじめとする海産物を食べられなくなったこと、河口が堆積物で塞がれてさえいることなどが含まれている。

政府が対処を余儀なくされている問題の例を挙げると、内地の警察は昨年、ジャングル内の殺人50件近くを調査した。これは例年よりも40件も多く、多くは金や女性をめぐる喧嘩、鉱夫たちが休日にラム酒を飲んで騒いだことに端を発するものだった。

“採掘の悪影響について訴えている長いリストには、売春、麻薬および人身取引の急増、公害、アメリカインディアンが魚をはじめとする海産物を食べられなくなったこと、河口が堆積物で塞がれてさえいることなどが含まれている。”

現在の傾向が続けば、今年の殺人件数は去年を上回りそうである。先週も、採掘地で売春を行っていた16歳の少女が三角関係のもつれから奥地で殺害されるという事件があった。

 

 

 

近隣諸国とのトラブル

 

不利な戦況を察して、自然資源省は最近、記録の不備や河岸での採掘などのさまざまな理由で現地の違反者を罰する一方、許可証を持たずに働いていた100人近くのブラジル人を強制送還して、親密だが強力な隣国であるブラジルを怒らせるようなリスクを冒した。

政府高官によると、ガイアナには1万5000人近くのブラジル人がおり、その多くは不法採掘に従事している。彼らは1990年代、軍によってベネズエラのジャングルから追い出され、南東のガイアナや近隣のスリナムに押し出され、そこで定住し、集中的に投資を行い、当局にとっては規制上の大きな頭痛の種になっている。

ブラジルに近いポタロ地方南西部では、過去2年間、採掘労働者が金を求めて大通りを2回にわたって掘り返し、地下の水道主管を引き抜いたために、住民が大きな穴の両側に取り残され、水道の供給が止まるという事態が起こった。政府高官は掘削装置を押収し、起訴すると脅した。

鉱山委員会と警察が言うには、他の問題と並んで彼らが対処を余儀なくされているのは、スリナムへの大規模密輸団だ。自然資源省のロバート・パサード大臣によると、その量は中小規模の採掘事業者の年間生産量である60万オンスあまりの半分近くになる。

密輸を撲滅するために、当局はスリナムに対して、採掘税をガイアナと同じ7%に引き上げるように交渉している。現在は採掘税が2%以下であるために、国境であるコレンティネ川をボートで20分かけて渡りさえできれば、密輸者は多額の利益を手にすることができるのだ。

それだけではない。世界自然保護基金が最近行った調査によると、採掘したばかりの金を食料と交換する小売商人からは、非常に高い血中水銀濃度が検出されており、それは同じく調査を行った多数の貴金属商についても同様であった。つまり、安全基準はごく甘く適用されているだけで、大方が無視されているということである。

 

 

 

気候変動

 

 

環境保護活動家でドミニカの元農業大臣であるアサートン・マーチン氏は、カリブ諸国は気候変動を契機として、成り行きに任せると失われかねない自然資源の管理の方法を厳しく見直さなければならないと述べている。

マーチン氏はIPSに次のように語った。「気候変動の原則からわかることですが、基本的に、自然資源のシステムが気候変動により衰弱したり、脆弱になったり、破壊されたりすると、それによって経済は崩壊します」

しかし、見通しは暗いばかりではない。マーチン氏は、カリブ諸国の人々にとって気候変動は2つの点でプラスに働くと信じている。第一は、気持ちを切り替えれば、単に反応するのではなく、先頭に立つのだと思えるようになること、第二は、数百万ドルもの気候変動基金を利用して、政府がより強力な経済を築けることだ。

同氏は、ガイアナが低炭素経済の実現を積極的に推進していることを指摘した。とりわけ注目すべきは、同国が国内の森林システムのわずか10%でカーボンクレジットに基づいて7000万ドル以上の基金を得ていることだという。

マーチン氏は次のように述べた。「彼らは来年度いっぱいで2億5千万ドルを獲得しようとしています。カーボンクレジットと炭素隔離評価に基づいてノルウェー1国と取引を行うだけで、それだけのことができるのです」

2009年7月、ガイアナは気候変動に立ち向かいながら経済発展を推進することを目指して低炭素戦略に着手した。

開始にあたって、当時のバラット・ジャグデオ大統領は、ガイアナのような新興国が単なる被援助国ではなく、気候変動の解決策の追求においては同等のパートナーとして見なされるプラットフォームが必要だと語った。

低炭素経済では、対策を取らなければ空中に排出される二酸化炭素の量を抑えるように経済活動を行い、その他の活動やライフスタイルも気候変動への影響を最小限にとどめることに重点を置く。

ガイアナの森林の80%にあたる約1500万ヘクタールは、過去にさかのぼっても手つかずのままだ。ガイアナ政府の委託で専門家が行った調査によると、森林破壊につながりかねない形の経済活動を行った場合、同国が生み出せるのは年間約5億8000万ドルだが、これらの森林をそのまま残した場合、世界に対する経済価値は400億ドル相当になる。

ジャグデオ元大統領は、ガイアナの森林は世界の資産であり、8000種の動物と植物が生息する、世界でも最も豊かな生物多様地域の1つであると説明した。森林は、地球温暖化につながる温室効果ガスの1つである二酸化炭素の吸収源としての役割も果たす。

森林破壊を抑えることに対して然るべき経済インセンティブを提示すれば、ガイアナは年間1.5ギガトンの二酸化炭素排出を抑制することができる。

2012年、米州開発銀行はガイアナの低炭素開発戦略を組織的に強化するプロジェクトを承認した。この承認により、600万ドル近くが戦略実施のためにガイアナに提供されることになった。なお、その前にガイアナは準備作業のため、ノルウェーから初回拠出金として106万ドルを受け取っている。

ガイアナのREDD+(森林減少・劣化等による排出量の削減)投資ファンドはGRIFと呼ばれ、同国の低炭素戦略プロジェクトに資金を提供するために2010年10月に創設された。

プロジェクトは、戦略の実施責任を担う機関の技術的および事務的能力を強化し、国レベルでMRV(監視、報告、検証)システムを構築する。

ガイアナ政府によると、ノルウェーとガイアナのパートナーシップはREDD+のパートナーシップとして世界でも2番目に大規模なものだ。

マーチン氏は、世界銀行や米州機構などの金融機関、それに国際連合との取り決めにより、カリブ諸国は気候変動を抑制する活動の結果として資金の提供を受けることができると指摘した。

「ガイアナのように、カリブ諸国は二酸化炭素隔離能力に基づいて自然資源を評価し、それを金銭的価値に置き換えることができます。あるいは債務削減や譲与的条件貸し付け増額の交渉の余地を広げるために使うこともできるでしょう」

ドミニカを拠点とするWaitkbuli Ecological Foundation(ワイトクベリ・エコロジカル・ファウンデーション)の設立者で代表を務める弁護士のベルナルド・ウィルトシャー氏も新しい考え方が必要であることに同意している。

ウィルトシャー氏はIPSに、カリブ諸国は今、「適切な産業」を興し、たとえば「然るべき種類の観光」を育成する必要があると語った。

「ドミニカはアンティグアをはるかに上回る観光産業を発展させる可能性を秘めています。アンティグアには太陽、砂浜、海などがありますが、ドミニカには海に加えて、アンティグアよりはるかに多くのものがあります」

「誰もが、観光に必要なのは太陽、砂浜、海だと言いますが、自然を満喫する、冒険を楽しむ、遺産を訪ねる、健康的に過ごすといったことを目的とする観光にはなかなか目を向けません」

「でも、伸びてきているのはこういった観光なのです。だらだらと歩いて、ヤシの木の下でラムを飲むだけなどというのは、これからは流行遅れになっていくでしょう。自分たちより大きな国と競っていては、カリブ諸国の観光は下火になっていくだけです。今の観光客は、もっと外の世界に飛び出していく観光、冒険が味わえる観光を求めています」

ウィルトシャー氏は、新しい形態の観光が盛り上がっているのは東南アジアやミャンマーのジャングル地帯だと指摘したうえで、次のように付け加えた。「ドミニカにはカリブ特有のジャングルがありますから、ジャングルの冒険がしたい数千人もの観光客を惹きつけることができるでしょう」

マーチン氏は、カリブ諸国のような地域は極めて多くの機会に恵まれながら、経済的に困窮していると嘆いた。

「これらの国の年間予算はそれぞれ6億ドルです。手つかずのままの自然のシステムを活かし、それと引き換えに国際的な金融機関から資金として、1年か2年でその国家予算の半分あるいはそれ以上を得られるなら、間違いなく安定します」

マーチン氏は、自然のシステムがいかに脆弱か、そしてそれゆえに自然資源を管理する方法を再構築することがいかに重要かを理解すれば、カリブ諸国は純粋に自然システムを気候変動対策と位置づけて、素早く方向転換ができるだろうと語った。

「今では専門的な知識があるので、計算すれば根拠は明らかなのですが、これらの国々が森林、砂礁、水系を保護することに対して、今や世界の他の国々は対価を支払わなければならないのです」

マーチン氏は次のように付け加えた。「特に考え込む必要はありません。気候変動は起こっているとして、話を進めましょう。私たちはこう言われているのです。『ほら、目の前に打つべき手があるじゃないですか。なんといってもこの方法は今度に限っては、我々のような小さな島国の役に立つものなんですよ』とね」

 

 

 

政府

 

安倍首相とバラット・ジャグデオ・ガイアナ共和国大統領は、2007年6月26日夕方に行った首脳会談の後、その成果として、両国政府が環境・気候変動分野での協力を強化するとした共同声明に署名した。

 会談では、安倍首相がG8サミットで提案した気候変動問題に対する長期戦略「美しい星50(注1)」の内容を説明したことに対し、ジャグデオ大統領は、海面上昇や洪水など、ガイアナが気候変動により直面する被害に懸念を表明。環境・気候変動分野での協力を日本に要請したため、安倍首相は環境行政に携わるガイアナの若手指導者数名を日本に招聘する意向を示すことで応えた。

 これを受けた共同声明の内容には、

 

(1)両国が環境・気候変動分野での協力を一層推進すること、

(2)両国が特に「気候変動の緩和策(注2)」、「適応策(注3)」、「生物多様性保全」の3分野に重点的に取り組むこと、

(3)日本の技術・経験が環境・気候変動問題の解決に重要な役割を果たすこと、環境対策を経済政策全体の中で行う必要性があることで両国の認識が一致したこと、

4)両国が「”美しい星50”の内容に沿った取組みのカリコム(カリブ共同体)諸国を含む他国への働きかけ」、「持続可能な森林経営」、「水と衛生」の3分野で具体的な協力を行うこと--が盛りこまれた。【外務省】

(注1)「美しい星50」は、

 

(1)2050年までに、世界全体の温室効果ガスの排出量を半減させることを目標として、革新的技術の開発と、環境に調和したライフスタイル・社会システムづくりに日本が積極的に取組み、その成果を「日本モデル」として世界に発信すること、

(2)京都議定書が規定していない2013年以降の気候変動対策の国際的な枠組みを、経済発展と両立可能で、各国の削減能力・事情に配慮した柔軟で多様性のある内容とし、全主要排出国の参加が得られるものとすること、

(3)07年度中に京都議定書目標達成計画を見直し、「1人1日1キログラムの温室効果ガス削減」を目標とした国民運動を新たに日本国内で展開していくこと--の3点を包括的な政策として示したもの。

(注2)温室効果ガス排出削減・吸収増加策。

(注3)海面上昇に伴う堤防建設など、気候変動によってもたらされる悪影響への対応策。これまでの条約交渉で、途上国側には先進国に途上国の適応策支援を期待する声が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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